匂いは化学物質
匂いは目には見えませんが、化学物質になります。私達は美味しい匂いを嗅ぐと、その食べ物を想像してお腹が空いてきたり、食べ物が悪くなっているのを嗅覚により発見したりします。また、糖尿病になると甘い息がしたり、加齢臭、ストレス臭などのにおいを発することも明らかになってきています。犬達の優れた嗅覚は、人間のガンの匂いや低血糖などを察知できると言われており、既に医療の発展や介助犬として注目されています。では人がストレスを感じた時、犬達はそれに気付いているのでしょうか。
犬はストレス臭を嗅ぎ分けることが出来る
イギリス・クイーンズ大学ベルファストのClara Wilsonさん達による研究で、犬は私達人間がストレスを感じた際に生じる息や汗の変化を93.75%の確率で察知することができると、示されました。(“Dogs can discriminate between human baseline and psychological stress condition odours”)この実験に参加した犬は年齢11ヶ月から36ヶ月の計4匹で、オスのコッカースパニエル、メスのコッカプー、オスのラーチャータイプ(サイトハウンド系)の雑種犬、メスのテリアタイプの雑種犬。(コッカースパニエルとコッカプーは生後10週目より現在の飼い主と暮らし、雑種犬2匹はレスキューセンターから里親の元へ来ている。全ての犬は去勢、避妊手術済)犬達はオヤツやクリッカーを使って匂いを一致させる識別作業訓練を受けています。この識別作業訓練とは、3つのサンプルが置かれた中から対象となるサンプルを選び、鼻を5秒間付ける姿勢を取るというものです。サンプルは禁煙者で水以外の飲食や精神安定剤を1時間以上とっていない条件で、暗算問題等を続けて解く前後をそれぞれ基準値サンプルと対象サンプルとし採取しています。加えてストレスレベル(0~10)の自己申告、心拍数、血圧を計測しています。実際に実験に使われたサンプルは、問題を解いている時に心拍数、血圧が上がり自己申告ストレスレベルが2以上上昇した36人の参加者のもので、全員採取後3時間以内に実験が行われています。実験ではフェーズ1で、各参加者の1つのストレスサンプルと2つの何も入っていないサンプルを置き、犬にストレスサンプルを選ばせます。フェーズ2で、1つのストレスサンプル(フェーズ1と同じ参加者の物。但し新しく用意した物)、1つの基準値サンプル、1つの何も入っていないサンプルを置き、犬にストレスサンプルを選ばせます。もしフェーズ2でもストレスサンプルを選ぶことが出来れば、犬がストレスを感じている人の匂いを嗅ぎ分けているということになります。結果、全720回のうち675回で93.75%の確実性で嗅ぎ分けることができたそうです。著者は、「この研究では、人がストレスを受ける前後の息と汗の匂いを犬は区別することができると示した。この発見で、人は精神的ストレスを感じると息や汗の匂いが変わり、訓練を受けた犬はその変化を嗅ぎ分けることが出来るということがわかった。」としています。既にセラピードッグは活躍していますが、この研究が進めば、視覚からではなく嗅覚を利用したセラピードッグの活躍が期待できるのではないでしょうか。