ポルトガルで数を減らしているイベリアン・オオカミを保護するためにも、牧畜犬を使って家畜をオオカミから守るプロジェクトがあるそうです。
ポルトガルでは何世紀にもわたって家畜をイベリアン・オオカミから守るためにガード・ドッグが働いていた。しかし、20世紀に入ると猟銃や毒を使いオオカミを撃退する方法が主流となっていったそうだ。しかし、ポルトガルでオオカミを守る法律が出来た今、歴史の古いポルトガル生まれのガード・ドッグの力を再び借りてオオカミ達と共存しようとする動きが出てきている。現在、約300頭ほどのイベリアン・オオカミがポルトガル北部、中部の高地に生存しているという。1988年からオオカミを殺したり傷つけることは法律で禁じられているが、オオカミによる被害で苦肉の策を取らざるを得ない牧畜家達は多く、オオカミ達の数は常に危機的状況が続いているという。ポルトガル・オオカミの保護団体(Grupo Lobo)は牧畜家達に、家畜を守る能力が高くオオカミを追い払える犬達と働いていた時代のやり方に戻るよう薦めている。「伝統的な牧畜犬を使う方法を牧畜家達に薦めています。これはオオカミから家畜を守るためだけではなく歴史の古いポルトガルの犬達を絶滅から救うことにもなるからです。」と保護プロジェクトの生物学者シルビアさんは説明する。カオ・デ・カストロ・ラボレイロ(Cao de Castro Laboreiro)、カオ・ダ・セラ・ダ・エストレラ(Cao da Serra de Estrela)、カオ・デ・ガド・トランスモンターノ(Cao de Gado Transmontano)などの犬種は家畜たちと強い絆を持ち、護衛する本能の高さは昔から大変評価されていた。「これらの犬種はハーディングをする牧羊犬とは違います。いつでも何か問題が起きていないか見張り、家畜を守るために番を欠かしません」とシルビアさん。オオカミの攻撃があった際は家畜との間に入っていき吠えてオオカミ達を追い払うそうだ。また嗅覚も優れており、自分の群れのヤギと他のヤギの区別も出来るほどだという。450頭のヤギを飼っている牧畜家のアルフレッドさんによると、このプロジェクトは効果があると言う。「政府は被害にあった数を確認しその分を賠償するが、時間がかかり大体1~2年位待たなければいけない。現在の経済情勢では長すぎる」という。アルフレッドさんは、オオカミと共存することは良いことだが収入が少ない牧畜家にとってオオカミによる被害は深刻だと語る。アルフレッドさんはオオカミ被害を減らすため、保護団体(Grupo Lobo)から生後2ヶ月になるTijaという名前のカオ・デ・カストロ・ラボレイロを譲り受けた。「オオカミが襲ってくると、1~2頭ヤギを失っていた。ひどい時は10頭以上失うこともあった。しかしTijaが来てからその数は4分の1にまで減った」とアルフレッドさんは語る。このプロジェクトに参加する牧畜家達は、トレーニングや世話の仕方をしっかり学び団体のリサーチ、モニタリングを受ける約束の元で無料で犬達を手にすることが出来るそうだ。現在までで、170の牧畜家達のもとに300頭の犬達が渡っているという。しかし、500頭の群れを完全に守るためには3~4匹の犬が必要になるそうで、中には乗り気でいない人達もまだまだいるという。長い間、害獣として考えてきたオオカミ達が保護動物になるという変化に対応するのはなかなか難しいことのようだ。 12 Feb, 2012