飼い主の帰りを待ち続けたイタリアの犬
その"犬"はおそらく1941年頃、フィレンツェのボルゴ・サン・ロレンツォにある小さな街で生まれたと思われる。村人達が近づこうとしても臆病なのか全く寄せ付けなかったという。ある日、街のボイラー工場に勤める男性ソリアーニさんがバスを降り自宅に向かっている途中その"犬"が怪我をして道路わきでうずくまっているのを見つけたという。ソリアーニさんは"犬"を自宅に連れ帰り元気になるまで看病をした。そして犬にファイド(Fido)という名前をつけて彼の犬として家族として暮らすことに決めたという。ファイドは出勤するソリアーニさんと一緒にバス停まで行きバスに乗るのを見届けた。そして夕方はバス停まで行きソリアーニさんの帰りを待つのが日課になった。しかし時代は第二次世界大戦の最中。1943年の12月30日街の工場は爆撃を受け多くの工員が命を落としたという。そしてソリアーニさんも命を落とした一人だった。この夜もいつも通り、ずっとそうしてきたようにファイドはソリアーニさんを出迎えにバス停まで向かった。もちろんファイドはソリアーニさんの姿を見つけることはなった。しかしファイドは死ぬまで14年近くもバス停に向かいソリアーニさんの帰りを待ち続けたという。ファイドの噂を聞きイタリアの雑誌がこの忠犬の話を掲載したところ、ほかのメディアからも注目を集め一躍有名になったという。1957年にはボルゴ・サン・ロレンツォ自治体長からゴールド・メダルが授与されたという。その様子は雑誌タイム(Time)にも掲載された。ファイドは1958年6月9日に息を引き取ったという。このニュースは新聞でも伝えられた。ファイドは待ち続けたソリアーニさんの眠る墓地の外に埋められたという。ファイドの死後、ボルゴ・サン・ロレンツォにあるダンテ広場にファイドの忠誠心を称えて像が建てられている。