
断耳、断尾とは?
断耳、断尾とは人の手によって犬が生まれながらに持っている耳や尾を切り整形することです。断耳・断尾の歴史
ローマ時代、断尾(または舌の一部を切る)をすることは狂犬病を防ぐと信じられていたそうです。その後も猟犬、闘犬、護衛犬として働いていた犬達に多く断耳、断尾が行われてきています。その理由として、敵となる動物に捕まれる部分を減らす
護衛犬が断耳されていると警戒している印象が強くなる
猟犬(ガンドッグなど)が深い茂みで怪我をしないようにする
地中に入る猟犬(テリア)などが動きやすくする
牛などの家畜に尻尾を踏まれないようにする(特に家畜に近づいて働くタイプの牧畜犬)
断尾が行われている犬は「ワーキング・ドッグ」となり、税金が免除されていた
地域によっては尻尾の長さにより、かかる税金が異なっていた。(ハンティングはお金持ちのスポーツと考えられており長い尻尾を持つ犬が猟犬とされていた。そういった地域では、尻尾の長い犬を持つ庶民は断尾を行い高い税金を免れた)...などがあるようです。
今も断耳、断尾をする理由
現在でもワーキング・ドッグとして活躍している犬達はいますが、日本におけるほとんどの犬達に行われている断耳、断尾には上記の伝統的な理由からではなくスタンダードを保つ
伝統的なスタイルを保つ
垂れ耳が引き起こす耳の病気を防ぐため
耳の聞こえがよくなるため
長い尻尾が汚れてお尻が不衛生になるのを防ぐ....などがあるようです。
どのように行われているの?リスクはある?
断耳
方法外科的に犬の耳介、垂れている部分を取り除きます。犬によって違いはありますが、約耳の半分位を取り除くことになります。外科的な手術で麻酔が必要になるため生後9~12週間位で行います(時期については犬若しくは病院によって違うようです)。施術後は立ち耳のポジションに腕木をつけたりして包帯などで固定します。包帯が取れるまでには数週間~数ヶ月かかり、その間包帯の交換などのケアが必要です。リスク全身麻酔のリスク
切断部分からの感染症の可能性
切断しても耳が思うように立ち上がらないことがある
体の一部を切るので犬は施術後、長い間痛みを感じてる
包帯が巻かれている間の不快感や他の犬達と遊べない犬もいる...など
断尾
方法生後間もない2~5日位の子犬に麻酔なしで行う場合が多いようです。主な方法は2種類あります。ひとつはバンディングと呼ばれ、子犬の尻尾の付け根に24~96時間ほどバンドを巻き血液の流れを止めて落とす方法(3日間位で自然に落ちる)。もうひとつは外科的に切り落とす方法です。麻酔をかけずに断尾を行う理由は、生後間もない子犬は痛みを感じる神経が発達していないためといいます。リスク子犬でも痛みを感じている
生後5日位の子犬は痛みを感じないとしているが子犬の中には明らかに痛がる反応、若しくは痛みを感じている反応をする犬も多いそうです切断部分からの感染症の可能性
尻尾が持つ役割を失う
(尻尾でのコミュニケーションやバランスなど)尻尾の残り部分に神経腫が出来、痛む可能性...など
動物福祉と法律
犬の断耳・断尾については『動物には利益がなく痛みを与える行為』として法律で禁止する動きがあり、ノルウェイ、スウェーデン、スイス、キプロス、ギリシャ、フランス、オーストリア、フィンランド、オーストラリア、カナダ(州による)などの国では「整形目的」である不要な断耳・断尾を禁止しています。但し断尾については賛成派もおり、ドイツでは猟犬は例外(但し犬種ではなく実際に働く犬の子犬に限る)、イギリスでは獣医による特定のワーキング・ドッグの断尾のみ認められています。特にヨーロッパの国々において、断耳・断尾を禁止する流れがあるのですが、アメリカにおいてはAKC(アメリカン・ケンネル・クラブ)が『犬種を定義し特徴を守り健康を保つためにも認めるべき行為』とする姿勢をとっています。日本においても断耳・断尾についてはっきりと禁止する法律はありません。生後まもなく行う断尾については基本的に行われており、家族に迎えるときにはすでに尻尾が短くなっている(なくなっている)場合が多いのではないでしょうか。
断耳・断尾は本当に必要?
日本においては現在のところ断耳・断尾を禁止とする法律はないため、判断は犬を迎える人(犬を選ぶ人)に任されているのではないでしょうか。もしこれから子犬を迎えるつもりなら家族に迎えたい犬種に断耳、断尾の伝統があるのかや断耳、断尾をしてない自然な姿はどうなのか調べてみて下さい。断耳については家に来てから判断出来るため、最近は日本でも行わない飼い主さんが増えてきているそうです。断尾については生後間もなく行われるためブリーダーさんにより行われることも多いようですが、ブリーダーさんの中にも様々な意見があります。家族の一員になる愛犬に、人側が望んで行う行為です。どんなプロセスを経て「伝統的なスタイル」になっているのかを知った上であなたの愛犬に必要なことかどうか判断して下さい。
NBT(ナチュラル・ボブ・テイル)の遺伝子
生まれながらにして尻尾が短い、または無い犬たちも存在します。この自然なボブ・テイルには突然変異遺伝子『T gene(C189G)』が多くの血統で関係しているといいます。この『T gene(C189G)』を持つ血統にはオーストラリアン・シェパード、ブリタニー、ジャック・ラッセル・テリア、スキッパーキ、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークなどがいるそうです。『T gene(C189G)』を持っておらず尻尾が短く生まれることがある犬種にボストン・テリア、ミニチュア・シュナウザー、ロットワイラーなどがいるといいます。NBTで生まれた犬は特に健康問題はないと考えられていますが、NBT同士の交配はリスクが高いとされています。(NBT遺伝子は常染色体優性であり2個のコピーは子犬に致命的であるため)。また、偏ったブリーディングが行われれば遺伝子プールが小さくなったりなどの可能性も起こるのではないでしょうか。<参考>断尾を伝統的に行っていた犬種(The Kennel ClubTraditionally Docked Breedsより抜粋)エアデール・テリアアメリカン・コッカー・スパニエルオーストラリアン・シェパードブービエ・デ・フランダースボクサーブリタニーイングリッシュ・コッカー・スパニエルドーベルマンイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルジャーマン・ショート・ヘアード・ポインタージャーマン・ワイヤー・ヘアード・ポインタージャイアント・シュナウザーブリュッセル・グリフォンビズラアイリッシュ・テリアジャック・ラッセル・テリアケリー・ブルー・テリアキング・チャールズ・スパニエルレークランド・テリアミニチュア・ピンシャーミニチュア・シュナウザーナポリタン・マスティフノーフォーク・テリアノーリッチ・テリアオールド・イングリッシュ・シープドッグウェルシュ・コーギー・ペンブローグジャーマン・ピンシャーポリッシュ・ローランド・シープドッグロットワイラースキッパーキスタンダード・シュナウザーシーリハム・テリアスムース・フォックス・テリアアイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィートン・テリアスパニッシュ・ウォーター・ドッグプードル(スタンダード、ミニチュア、トイ)ワイマラナーワイアー・フォックス・テリアヨークシャー・テリア