犬が持つそれぞれの特徴を残すためや強調するために行われるブリーディングがもたらす影響は、犬達の外見だけではなく脳にも大きな変化を与えているそうだ。オーストラリアにある大学の研究者達によるレポートが2010年7月の科学ジャーナルPLoS ONEに掲載されている。
人が介入して行われる犬のブリーディングは健康に影響し、犬種によって出易い病気などがある(例えばパグ脳炎、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの脊髄空洞症など)。これについては耳にすることも多いが、今ままで人がブリーディングに大きく介入してきたことによる"犬の脳に与えた影響"についてはあまり調べられていなかったという。私たち人間は犬との長い歴史の中で実用的、又は見た目の良さなどを求め犬のブリーディングを繰り返してきており、それにより犬の頭蓋骨のサイズや形は大きく変化してきている。今回の研究によると短頭種の犬達の脳は前方に最大15度傾き、脳内の嗅覚をコントロールする部分は根本的に位置が変化していることがわかったそうだ。「犬の頭蓋骨のサイズと形、そして脳の傾きと嗅葉の位置に独立した強い相関関係を見つけた。犬の頭、頭蓋骨の形が平らに(パグのように)なっていくと、脳は前方に傾き匂いを司る部分は頭部の下側へと移動していく」と研究チームのニューサウスウェールズ大学のマイケル博士はいう。小型犬~大型犬、頭蓋骨の形やサイズに大きな幅がある犬達。この多様性は犬の持つゲノム(遺伝子が持つ情報)の高い柔軟性を示しているという。「犬は驚くほど人によるブリーディングに敏感に呼応しているようだ。頭蓋骨の形の大きな変化に犬の脳が対応できていることは驚異的で、他の生物では記録にないことだ」そうだ。「私たちは犬は匂いの世界に生きていると考えているが、その"匂いの世界"が犬によって随分違うのではないかということを今回の発見は示している。次の研究は、犬におけるこのような脳内編成の変化が脳機能の系統的差異にも関連しているのかどうかだ」と研究者の一人、シドニー大学のポール教授は語る。PLoS ONE - レポートの詳細はこちら(英語)ソース:02 Aug, 2010Science Daily